
測域センサー
本製品は当社から販売しております。
overview
測域センサーとは?
2D ToF LiDARを搭載し、広範囲のエリア検出が可能な測域センサーです。
専用のWindowsターミナルソフトから監視エリアを自由に設定でき、現場毎のニーズに対応した柔軟な使い方が可能です。
本センサーは警報器や表示灯と無線連携を提供しており、配線工事の制約を受けずに設置ができることから、既存設備への後付けもスムーズに行えます。これにより、工場・倉庫・建築現場・公共施設など、幅広い場面での警報や監視補助に活用ができます。
尚、本製品はセーフティレーザースキャナのような人命や機械安全を直接保護する装置ではなく、警報・情報取得・監視補助に適したセンサーです。


background
背景・課題
物流倉庫などでフォークリフトが出入口の上部に衝突する事故が度々、発生しておりそれらの対策を行いたいというご要望がありました。その解決策の1つにLiDARセンサーを使用したソリューションが考えられました。
しかし市場にはLiDARを搭載した測域センサーが複数存在しますが、それらを警報器や他のシステムと連携しようとすると、高額な導入コストや配線工事による設置制約が課題となりました。
現場にとってはもっと柔軟で導入しやすいセンサーが求められており、こうした要望から、「LiDARを活用しながら無線通信によって設置制約を取り除き、現場で直観的に設定が出来るセンサー」をコンセプトにした開発がスタートしました。
profile
依頼主 | 通信機器を扱う商社 |
分野・用途 | 車両やフォークリフトの補助検知、 セキュリティ用途、人流計測 etc |
技術的アプローチ | ARM系CPUのシリアル通信、BLE通信、 ケーシング設計、GUIアプリケーション設計 |
Requirements
要求仕様・制約条件
検出性能とコスト | 検出距離は10m程度とし、過剰性能よりもコスト最適化を重視する。 検出条件の閾値を調整可能とし、使用環境ごとに異なる閾値の設定により 誤検知を最小化できること。 |
設定と運用性 | 専用アプリのインストールを不要とし、PC環境に依存せずに利用可能とする。 エリア設定やパラメータの読込・書込を直観的に行える画面構成にする。 |
出力と接続方式 | 検出信号の出力は有線/無線の両方式に対応し、現場環境に応じて選択できること。 |
ケーシング | 小型・軽量設計で、当面は3Dプリンタで代替できること。 (ただし防塵・防滴性能は必要) |
Our approach
当社のアプローチ
センサー選定
LiDARユニットの選定を以下の観点から行い、最適なユニットを採用しました。
(市場実績と信頼性の確認)
部品メーカーの市場実績が豊富で、長期供給が見込めるLiDARを候補とし、安定した製品寿命と信頼性を確認。
(ターゲットコストの適合)
検出距離10m前後の仕様でコストメリットがあり、性能と価格バランスを重視して選定。
(PoCでの検証)
実際の現場環境を模したPoCを実施し、安定性を検証。その結果、実環境での再現性をもって要求仕様を満たせることを確認。
(将来拡張性の考慮)
今後の利用シーン拡大を見据え、性能別ラインナップのあるシリーズを選定。将来的なスペックアップや上位モデルへの移行に対応できることを確認。


検出ロジック
本開発では、単に「エリア設定内で検知する」だけでなく、検出ロジックを柔軟に設定できる仕様を検討しました。この設定によりアプリケーションの幅を広げ、現場ごとの用途に最適な運用を可能にしました。
(エリア設定の拡張)
距離・角度による基本的なエリア設定に加え、「滞在時間や検出物体の大きさ」の閾値をユーザーが自由に設定できる機能を実装しました。
「一瞬の通過は無視し、一定時間以上エリア内に滞在した場合に検出」や「人やフォークリフトなどは検知するが小さな物体は無視」といった使い方が可能になります。
(柱・固定物の自動スキャン)
設定エリア内に既設の柱や什器がある場合に、スキャンした結果をボタン押下で除外対象として処理できる機能を実装しました。
従来の柱や障害物を避けて複雑な形のエリアを設計する必要があった作業を簡略化し、現場での初期設定や再設定の負担を軽減しました。
設定アプリの開発
「現場で誰でも即導入できる実用的なセンサーシステム」。その思想を設定作業にも反映し、インストール不要・GUIターミナル式のWindowsアプリケーションを開発しました。
(容易な導入と環境依存の排除)
アプリケーションはPC環境に依存せず、デスクトップに配置するだけで即利用可能。
インストールや管理者権限といった制約を無くし、どの現場PCでもすぐに設定作業を始められるように設計しました。
(シンプルで直観的な操作性)
パソコンとセンサーはUSBで接続し、複雑なネットワーク設定の必要性を省きました。
GUI画面は直観的に理解できる構成にし、必要最小限の設定項目に絞ることで現場担当者が短時間で習得できる操作性を実現しました。
(市場製品との差別化)
一般的な高機能LiDAR製品は多彩な設定が可能な一方、導入時の学習コストや価格が高いことが課題でした。本開発ではあえて高機能化を追わず、「低コストで使いやすい設定ツール」として警報・監視補助用途に最適化されたコンパクト設計により、導入障壁を下げました。


ケーシング
本開発では、筐体のコンパクト化にも注力しました。
LiDARユニット・制御基板・スイッチなどのUI部品を含めた全体をデザインし、コンパクト化・防水性・外部インタフェース設計まで一貫して対応しました。
筐体には実環境での使用に十分耐えられる素材を選定した上で、3Dプリンタによる筐体造形を行いました。これは試作品にとどまるものではなく、製品として販売できるレベルの完成度を備えており、市場投入も可能です。
リリース前の初期投資を大幅に削減し、また将来の販売動向を見極め、必要なタイミングで金型製造へ移行できる柔軟性を重視しました。
achievement
開発の総括
「測域センサー」の開発では、センサー選定から検出ロジック設計、設定アプリ開発、筐体設計に至るまで複数の要件と制約を総合的に整理し、現場ニーズに即したセンサーシステムを実現しました。
LiDARユニットの市場実績やコストバランスを見極め、PoCでの安定動作を確認したうえで「既存部品を活かした最適解」を開発案件ごとに提供しております。
また滞在時間や対象物の大きさによる判定、固定物体の自動除去といった検出ロジックなど、「汎用センサーを現場用途に落とし込むためのアルゴリズム設計」は他製品との差別化を実現したものです。
このように本開発でのアプローチは、LiDARに限らず各種センサー応用製品、警報・監視システム、小ロットからの市場投入案件など幅広い開発テーマに展開可能です。「市場ニーズを満たすために、どの技術要素をどう組み合わせればよいか」を見極め、お客様ごとの制約条件を踏まえた開発をご提供いたします。